上絵具の安全性について

上絵具の安全性について

2018年1月26日
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上絵具の安全性について

 ☆食品衛生法(平成20年厚生労働省告示第416号)に関する対応

商品として一般消費者に販売される完成品には、食品衛生法に基づく試験をクリアしていることが求められています。その対策はそれぞれ異なってくるのですが、例えば大手洋食器メーカーでは上絵付けではなく、イングレーズや下絵付けへの切り替えも数年前より行なっています。この食品衛生法で対象となるのは、あくまでも食器として販売される完成商品に対してであり、ホビー(個人使用の範囲)の作品に関しての適用ではありません。

食品衛生法でもポイントとなっている鉛に関しては、アメリカのカリフォルニアの法令が一番厳しく、ヨーロッパでも日本以上にこのようなことに対しては敏感ですが、やはりホビーの分野では欧米でも耐酸・耐アルカリ性を備えた有鉛絵具が一般的です。なぜなら、無鉛絵具は、運筆性、仕上がりの艶などの面では有鉛絵具に劣り、コストも高いからです。仕上がりや使い勝手の面で有鉛絵具には及びませんが、安全面を重視される方には、無鉛絵具を使用することを当社では推奨しております。

ただし、大手メーカー並みの安全基準のレベルをご家庭での作品作りで実行するのは不可能です。なぜなら、完全に無鉛化するのであれば、窯までそれ専用にしなければなりませんし、徹底した生産工程での管理が必要だからです。仮に無鉛絵具だけを使ったとしても、有鉛絵具の焼成をしたことがある炉では、メーカーで行なわれる溶出試験の高いレベルをクリアすることはできません。これらの試験では高濃度の酢酸に食器を長時間浸して鉛の溶出レベルを調べます。転写紙に関して言えば、コーティングとしてのフラッキスを最後に印刷することでその溶出リスクをより抑える処置が施されています。その他、重金属フリーの有機インキを使用した転写紙も出てきています。

 

 ☆上絵具を正しく使用する為に

さて、上絵具の安全性に関してですが、現在、チャイナペイントやポーセラーツの教材として販売している有鉛絵具も、ほとんどが耐酸・耐アルカリ性を備えています。陶絵付けの長い歴史の中で有鉛絵具の改良はめざましく、その安全性の高さは昔とは比べ物になりません。

この上絵具を正しく使用するためには、適正温度で焼成(800℃以上が望ましい ※陶磁器の場合)することが大切です。ただ単純に温度を上げて焼成するだけではなく、ねらしをかけることで鉛は安定してガラス被膜を生成し、その溶出リスクは少なくなります。焼成を繰り返す場合は、温度を少しずつ下げていきますが、これはすでに焼きついている絵付け部分にダメージを与えないためです。高温で何度も何度も焼成を重ねれば、釉薬に定着した絵具に何度も負担をかけて、絵付けした部分に貫入(細かいヒビ)が入ったり、変色したり、まれにですが化学変化で釉薬がマット状になることもあります。こうした、低温焼成による鉛の溶出を気にされる方は食品を置いたり直接口をつける部分の絵付けはなるべく一回目の焼成で済ませることを推奨致します。ねらし時間については、炉のタイプに応じますが、家庭で使える電気炉においては、20分程度で十分です(ホビー用途としては)。

 

 ☆上絵具の脱色について

コバルト系の顔料(ブルー系に含まれる)は酸やアルカリに弱いので、例えばブルー系の絵付け部分にレモンを長時間置いておけば退色することがあります。こちらのリンクでは、各種カラー別の退色例を紹介致します。

退色例(Fade Colors Example) ※協力:(株)本荘化学研究所

これは、あくまでも長時間放置した場合で、日常生活においてお酢よりも強い酢酸液に何日も浸しておくことはないと思われます。日常に使う範囲でレモンやビネグレットソースを使ったお料理を置いたとしても、鉛が溶け出すわけではありませんので、ご安心ください。ただし、カップの内側や皿の食物を載せる部分などに全面的な絵付けをすることは避け、セレンやカドミウムが含まれる絵具(ビビッドな赤やオレンジにこれらの鉱物が使われます)は、口を直接つける部分には使わないということが大切です。

陶絵付けを楽しく安心して行なっていくために、こうした絵具の特徴を理解し、作品作りに活かしていただければと思います。

参考リンク:陶磁器試験場・セラテクノ土岐 http://www.city.toki.lg.jp/shisei/soshiki/kezaikankyo/seratekuno/

 

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